その日焼け止め、実は海の環境破壊?ダイビングを始める前にサンゴを守る選択を知ろう
近年、ダイビングライセンスを取得する際のアンケートで「海の環境保全に興味がある」という方が増えてきました。
海洋汚染を減らすためにレジ袋の有料化や、紙ストロー、紙トレーの使用など、使い捨てプラスチックゴミの削減が当たり前になってきた世の中ですが、海洋汚染の原因はプラスチックゴミだけではありません。
そのうちの一つが、「日焼け止め」といわれています。
私たちが肌を守るために使用している日焼け止めが、海へどう影響しているのでしょうか?
今回は、通常の日焼け止めの問題点から、選び方まで丁寧に紹介します。
この記事をきっかけに、ダイビングをする際には「海とサンゴに優しい日焼け止め」を、日焼け止め選びの際の選択肢に入れていただけると幸いです。
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目次
Toggle従来の日焼け止めの問題点
私たちが普段使用している日焼け止めには、サンゴの成長を妨げたり、サンゴのDNAを傷つけたり、サンゴの繁殖活動に悪影響を及ぼす可能性がある成分が入っており、サンゴの白化現象の原因にもなっています。
サンゴの白化は、サンゴを住みかとしている水中生物の生態系を壊し、食糧として海産物を必要とする人間にも悪影響を及ぼします。
また、サンゴ礁は防波堤の役割も担っており、サンゴ礁のお陰で台風や地震での大津波から守られている地域が多くあります。
台風の襲来が多い沖縄にとって、サンゴの減少は人命に関わることだということをしっかりと把握しておく必要があるでしょう。
海は広大なので、流れ出た日焼け止めは海全体に広がっていくようなイメージがありますが、その逆です。
そのまま周辺に留まり、サンゴ礁や多種多様性に富んだ海に、そのまま蓄積していきます。
サンゴは、イソギンチャクやクラゲと近い生物で、海の生物多様性を支える動物です。もちろんサンゴだけでなく、魚、ウニ、エビ、貝、藻類などの海に生きる生物に悪影響を及ぼしていることを考えると、海や人に与える影響は計り知れません。
海へ流れ出ている日焼け止めは、毎年約14,000トンといわれており、ジェット機(中型旅客機)の約178機分に相当します。
海沿いのホテルや家庭の生活排水が海に流れ出ることを考えると、海や川で遊ぶ人たちだけでなく、プールやビーチで日焼け止めを使用する全ての人たちが考え行動すべき問題です。
サンゴに優しい日焼け止めとは
サンゴに優しい日焼け止は、サンゴに有害な成分を含まない、海の環境に優しい処方であるということが大前提です。
では、サンゴに有害な成分とは何なのか?
それは「紫外線吸収剤」といわれるもので、代表的なもので「オキシベンゾン」「オクチノキサート(メトキシケイ皮酸)」の2つがよく挙げられます。
サンゴに悪影響を及ぼす「紫外線吸収剤」が無配合の日焼け止めは「リーフセーフ」と呼ばれ、ダイバーやネイチャーガイドにとっては常識になりつつあります。
「リーフフレンドリー」「ビーチフレンドリー」「オーシャンフレンドリー」といった日焼け止めがありますが、これらも「リーフセーフ」と同じ、サンゴに優しい日焼け止めです。
ちなみに リーフとは、葉っぱのleafではなく、サンゴ礁の「礁」のreefからとっている言葉です。
サンゴに優しい日焼け止めの選び方
日焼け止めを選ぶ上で注意してほしいことがもう一つあります。
それは、多くの化粧品会社では、サンゴに悪影響を及ぼす代表的な成分「オキシベンゾン」「オクチノキサート」を使用していないというだけで、「リーフセーフ」として販売されていることです。
この二つは「紫外線吸収剤」の代表的な成分なだけで、サンゴに悪影響な成分は他にも複数あり、注意が必要です。
例えば、無機系の紫外線散乱剤である、「酸化亜鉛」「酸化チタン」といった成分が配合されているか、パッケージの成分表示で確認しましょう。
これら「ナノ粒子」が含まれる製品は、極小のナノ粒子が海に流れ出た場合に、サンゴが誤って摂取してしまうことがあります。海ゴミが問題の原因となっているマイクロプラスチックのような働きをしてしまうのです。
本当にサンゴに優しい日焼け止めの成分は、天然由来のもので作られています。
先述した「リーフセーフ」「エコフレンドリー」「ビーチフレンドリー」「紫外線吸収剤不使用」といった表記や、「ノンケミカル」「ナノ粒子不使用」の表記がある商品を選びましょう。
おすすめのサンゴに優しい日焼け止め
成分:ゴマ種子油、酸化亜鉛、ヤシ油、ミツロウ、ホホバ種子油、ラベンダー花油、セイヨウハッカ油、ユーカリ葉油
天然成分のみで作られていて、赤ちゃんの肌にも安心して使用できます。
天然のウォータープルーフで汗や水に強いですが、石鹸とぬるま湯だけで簡単に落とせる、まさに人にも海にも優しい日焼け止めです。
もちろん日焼け止めとしての効力も侮ることなかれ。
シミ・シワ・たるみの原因になるUVAをブロックする効果が、4段階のうち4というMAX値です。※日焼け止めに表示されているPA++++にあたります
保湿美容成分が60%以上配合されているので、化粧下地としても使用できるところもポイントが高いです。
沖縄のホテルやダイビングショップでは、使い切りサイズのものが販売されていることがあります。持っていくのを忘れた際には、コンビニやドラッグストアだけでなく滞在先のホテルや予約先のダイビングショップにも相談してみましょう。
日焼け止めを上手に使うコツ
こまめに塗り直す
一度にたくさん塗るのではなく、2〜3時間に1度、こまめに塗り直す方法がおすすめです。
特に海や川遊びでの環境下では、ウォータープルーフでも、肌をタオルでこすったり、体の動きで器材とすれたりします。
日焼けはシミ・ソバカスや皮膚ガン、免疫低下など、人にとっての悪影響が多様にあるので、こまめな塗り直しを意識しましょう。
ラッシュガード、帽子などで日焼け対策
リーフセーフは残念ながら公式に証明されているわけではなく、海やサンゴに100%無害であるとは限りません。
そのため、ラッシュガードや帽子などで日焼け対策をして、極力、日焼け止めの塗る量を減らすことが大切です。
肌に浸透させるまで15〜20分待つ
肌に塗ったあとすぐに濡らしてしまうと流れ出てしまう可能性が高く、効果も半減してしまいます。
アクティビティを始める15〜20分前には塗布し、日焼け止めを肌に浸透させましょう。
サンゴに有害な成分を禁止している地域
ハワイでの日焼け止め規制法は有名ですが、その他にも規制や禁止している地域があります。
規制の仕方は様々ですが、地域によっては観光客から没収するところや、罰金が課されることもありますので、旅行の際はルールや規制を確認しましょう。
以下、通常の日焼け止めの使用・販売を禁止している地域です。
ハワイ州(アメリカ)
オキシベンゾン/オクチノキサートを含む日焼け止めは販売禁止
※医師の処方によるものは対象外
フロリダ州キーウェストビーチ(アメリカ)
オキシベンゾン/オクチノキサートを含む日焼け止めは販売禁止
※医師の処方によるものは対象外
パラオ
以下、10種類の化学物質が含まれたもので販売と使用が禁止。違反者は1,000ドル以下の罰金。
オキシベンゾン※/オクチノキサート※/(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル・メトキシケイヒ酸オクチルなど)/オクトクリレン※/エンザカメン/トリクロサン/メチルパラメン/エチルパラベン/ブチルパラベン/ベンジルパラベン/フェノキシエタノール
※紫外線吸収剤
タイ
以下、4種類の成分のいずれかを含む日焼け止めの国立公園への持ち込みと使用が禁止。違反者は10万バーツ(約35万円)の罰金。
オキシベンゾン/オクチノキサート/メチルベンジリデンカンファ/ブチルパラベン
ボネール島(カリブ海)
オキシベンゾン/オクチノキサートを含む日焼け止めは販売禁止
※医師の処方によるものは対象外
まとめ
ダイバーとして、海が大好きな人として、海に恩恵を受ける人として、海洋汚染を減らすために、個人でできることはたくさんあります。
「船上で出たゴミは、お弁当の輪ゴム一つであっても、確実に陸に持ち帰って捨てる。」
「タンクのテープを海の中に持ち込まない。」
「魚に餌付けをしない」
など、些細なことですが、大好きな海の環境を守る意識の中に、「日焼け止めは天然成分のものを使用する」という項目を増やしてみてはいかがでしょうか?
ちょっとしたことですが、こうした取り組みを周囲に伝えることを考えると、個人の選択が海洋環境に与える影響は多大なものです。
この記事で海と日焼け止めのことはもちろん、海洋環境を考えるきっかけになれば幸いです。