魔王の宮殿や通り池で要注意!ダイビングで起こるリバースブロックを知ろう
水中を潜降中に水圧で耳などに異常を感じ潜降がしづらくなる「スクイズ」は、初心者から上級者まで誰もが一度は経験すると思いますが、「リバースブロック」はその逆で、浮上中に頭や耳などに痛みや違和感などの異常をきたす症状です。
経験をしたことがない方は想像しづらい事象かと思いますが、いざなると大変です。
リバースブロックが起きると、残圧が少なかったり減圧不要限界がせまっていたりで、浮上したくても痛くて浮上ができない状況です。経験済みの方は二度と経験したくないと感じていることでしょう。それほどリバースブロックは厄介です。
今回は、ダイバーであれば地形好きだけでなくすべての人に知っていてほしい「リバースブロック」について詳しく紹介します。
未経験でも経験済みでも内容と対処法を知っているだけで、いざという時にパニックや不安を和らげ、安全なダイビングに繋がります。ぜひ、今後のスキューバダイビングライフに活かしてください。
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目次
Toggle浮上ができない!?リバースブロックとは
まずは、リバースブロックとはなんなのか?ダイバーにどのような影響を与えるのか?ということを説明します。
リバースブロックとは、上述した通り、浮上中に頭や耳などに痛みを伴う症状です。
なぜ痛くなるのか?
ここで思い出して欲しいのが、初心者や寝不足な時などに経験することの多い、潜降中の耳に感じる痛みや違和感、いわゆる「スクイズ」です。
水深が深くなっていくと、体にかかる水圧が増していき、体内にある空間が押されて「スクイズ」がかかります。それを解消するために「耳抜き」を行います。
※耳抜きの対処法、コツを知りたい方はこちらの記事を参考にしてください
【関連記事】ダイビング時に欠かせない耳抜きのやり方
リバースブロックは、そのスクイズの逆です。
浮上すると体にかかる水圧がどんどん減っていき、体内にある空間の圧力の方が大きくなります。通常であれば内側と外側の圧力の差をなくすために体内の空気が自然と抜けるのですが、うまく機能しない場合にリバースブロックが引き起こされ、主に副鼻腔や耳に痛みがでるのです。
このリバースブロックが厄介なのは、「浮上すると痛い」というところです。
スクイズであれば耳抜きなどで対処できなくても、上がってしまえば問題は解決。そのままダイビングを中止することもできます。
リバースブロックでは浮上での痛みを回避するために、痛みを感じる水深よりも深い場所にいなければならないということです。
想像してみてください。
浮上中ということはそこから先は安全停止か、少なくともダイビング後半という状況です。体力が少ないこともありますが、一番の心配は残圧(残りの空気)です。もうすぐ空気がなくなりそうなのに痛みで浮上ができないのです。
しかもリバースブロックが起こる水深が安全停止圏内でない場合、リバースブロックが解消するまで安全停止すらできません。
自分はちゃんと浮上できるのか、残圧はもつのか、ガイドやバディは気づいてくれているのか、不安と痛みの葛藤の時間はたった数秒であっても、大変長い時間に感じてしまいます。
宮古島の海は危険な環境?
特に要注意なのが、宮古島のように縦穴の洞窟やドロップオフが多く、最大水深が30m以上というダイビングポイントがてんこ盛りの場所です。
浅い水深から一気に深い場所へ潜降していくことが多く、強引に耳抜きをしてダイビングの続行を判断するダイバーをよく見かけます。
ボートから水中へエントリーした瞬間に想像を超える透明度と、カラフルな魚たちやサンゴがあなたの目の前に広がるのですから、早くガイドが見せてくれる景色に追いつきたい気持ちはとてもわかります。
しかし、その感動のままに痛みを耐えて潜降しても、約30分後の浮上中にリバースブロックが待っている可能性があります。
しかも水深18m以深にもなると安全停止が必須な環境。あなたが安全に浮上できるようサポートするガイドやバディにも影響が及びます。
実際に、水深20mに達する魔王の宮殿で感動の景色を見た後に、リバースブロックが原因でなかなか洞窟内から出られなかったダイバーを見たことがあります。暗い洞窟内での体の痛みはさぞかし不安だったでしょう。
少々重い話になってしまいましたが、ここからはリバースブロックの対処法や事前の注意点を紹介します。少しでも不安や心配を解消し、今後もたくさんダイビングを楽しむために、ぜひ参考にしてください。
リバースブロックの対処法
浮上中に痛みを感じてしまったら、慌てずに一旦1mほど沈んで空気が外に出ていくのを待ちましょう。空気が出る感触としては、パリパリとか、プスプスとか耳抜きと似たような感じです。
空気が出やすくなるコツとしては、これも耳抜きと同じような感覚で鼻をつまんだり、顎を動かしたり、耳の後ろをさすってみたりすることです。
その後、再度ゆっくりと浮上してみて、それでも痛い場合はもう一度水深を下げ、空気の排出に専念します。慌てずに根気強くゆっくりと時間をかけて浮上しましょう。
特に沖縄のようにボートダイビングが主流の場所では、潜降ロープがある場合が多いので、普段使わないという方もリバースブロックのような非常時にはしっかりロープを使用して、自身の水深の調整を小まめに行ってください。
宮古島に多い洞窟ダイビング中での浮上の際にリバースブロックがかかった場合は、水中生物に触れないように注意しながら、岩壁やドロップオフなどの近くの岩に捕まり、深度調整を行いましょう。なお、このような時のためにも、自身が怪我をしないようにグローブの着用やBCDポケットへの常備をおすすめします。
リバースブロックになったとわかった時点で、できればガイドやバディにハンドシグナルで異常があることを伝えましょう。
※ハンドシグナルに関してはこちらの記事で詳しく紹介しています。
【関連記事】安全なダイビングのためにハンドシグナルを覚えておこう!
伝える相手がガイドやその道のプロであれば、何を準備し、どのような環境がいいかを判断してくれます。できれば上記のようなサポート体勢の中で、とにかく慌てずゆっくりゆっくり浮上していきます。
リバースブロックは、これをすれば一発で解消される!といったものはなく、上記のように根気強く対処していくしかありません。
また、これをすればリバースブロックは起こらない!といった完全な予防方法もありません。ただ、リバースブロックを避け、起こしづらくする事前の対策はあります。
これからダイビングを予定している方は、以下の内容をぜひ頭の片隅に入れておいてください。
リバースブロックを防ぐための注意点
リバースブロックを防ぐ完璧な方法はありませんが、事前に知り得る現象が一つだけあります。
それは、潜降中に耳抜きがしづらかった、痛くても無理矢理耳抜きをして潜降したという場合です。
潜降中に痛いということは、圧均衡がうまくいかない体調ということ、つまり浮上の際のリバースブロックも起きやすいということです。
無理に潜降せず、ダイビングを中止することをおすすめします。
潜降中に問題がなかったとしても、リバースブロックは予兆なく起こる場合があります。
それは風邪気味や副鼻腔炎、寝不足、二日酔い、体調不良といった場合です。
そもそもそのような状態でのダイビングは控えることが先決。ダイビング当日に体調に関してダイビングスタッフからも念を押して確認があるはずです。しかし、慣れれば慣れるほど判断が甘くなるダイバーが多いです。
過去にあった例では、通り池を潜っていた6名のダイバーのうち、寝不足だった1人のダイバーがトンネルを抜けて池に浮上する際にガイドにハンドシグナルで頭痛を訴えることがありました。
この時は、後続のチームと合流してガイドの1人と一緒に引き返してボートに戻ることで、全員がダイビングを中止することをまぬがれました。
当たり前のことですが、リバースブロック然り、水圧が常にかかるダイビングではどのような異常事態が起こるかわかりません。
これを機に自身の体調をごまかさずに、上記に当てはまる場合は、ダイビングは中止し体調を整えることを優先してください。
また、リバースブロックを起こしてしまった後は次のダイビングがある場合も中止することをおすすめします。
楽しみにしていたダイビング旅行、多少無理をしてでも潜りたいという気持ちはわかります。一緒に潜っているダイビング仲間や予約したダイビングサービスに心苦しくなる方もおられることでしょう。
ただ、危険予測は非常に大事な意識です。あるかないかであなたはもちろん、バディの安全にも関わります。
自身の体力やスキルを過信せずに、中止するという決断は勇気を持って行ってください。
まとめ
リバースブロックの実例で少々心配になった方もいるかもしれませんが、シンプルに言うと万全な体調でスキューバダイビングを楽しみましょう!ということです。
また、日本の主なダイビングスタイルは現地のダイバーや引率のプロダイバーがレジャーダイバー(ダイビングを趣味とする方)のガイドを行うため、あなたのダイビング知識にプラスして安全で快適なダイビングが行える環境なので、必要以上に不安になることはありません。
船酔いや耳抜きといったご自身の体調や体質で対策をとるのと同じように、リバースブロックのことも意識をもち、今後のあなたのダイビングに役立てて頂ければ幸いです。
なお、今回のリバースブロックの説明において、水圧と人体における影響が気になった方は、ダイバーとしての最初の講習であるオープン・ウォーター・ダイバーコース(PADI)のテキストにあります「水圧と空気の関係について」で記載されていますので、復習してみてください。
知識だけでなくスキルに不安のある方は、最寄りのダイビングスクールでリフレッシュプログラムやアドバンスドコースなどで潜降や浮上のスキルを実践しながら、中性浮力を再度学びなおすことも可能です。
ぜひ宮古島でのファンダイビングが快適で安全になるよう、いろんな環境を活用して自信を持ってください。